銀座の創作展にあたりひとこと(2006.2.25)
畑田美智子

被せガラスの創作を出来るだけ多くの人に知ってもらいたいということと、その美しさを認識してほしいと思い、このたび東京、銀座で作品展を開催することになりました。

 被せガラスは100年前有名なフランスのガラス作家のエミール・ガレにより世に広められましたが、その後はガレの死や機械的工法によるガラスアートの台頭により少しずつ衰退していきました。今では、中国や日本で切子ガラスなどとして、またルーマニアでは伝統的に続けられていますが、その主流は型押しガラスや吹きガラスに押されています。

私はこの被せガラスをサンドブラストして100年ぶりによみがえらせればと思い、ルーマニアの工房を訪ねたり自然を観賞したりして学びました。

 ガレは、自然を愛しそれをいつまでも残したいと思い、何とか模写ではなくその美しさの真実に迫り、すさまじい執念をもって追求し続けたのです。そのエミールガレのコピーはガレ風としてずっと装飾品などには生き続けています。私は、ガレ風や形ではなくその精神をよみがえらせたいと思ったのです。それが、あまりにも無謀な試みだとすれば、せめてそのガラスに対峙したときに感じる世界観、宇宙観を表現たいと思うのです。

 作品の素材は単なる小さな花瓶やランプシェードやコップではありますが、その中に自然に生きたものをよみがえらせたい、永遠に命あるものとして残したいと思います。また、ガラスの中の一つの気泡は唯単に傷であるかもしれませんが、その「えくぼ」も個性として作品に生かすようにしたい、すべてを生かすことが出来る、生かせてこそ作品なのです。そういう祈りにも似た願いのもとに作品を作っています。

 この思いを少しでも多くの人たちに理解していただければ幸いです。

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